ポーランド映画『リベリオン ワルシャワ大攻防戦』を見た

先日ポーランド映画祭で見逃した『リベリオン ワルシャワ大攻防戦』をDVDで見た。
1944年のワルシャワ蜂起の話だ。


【タイトルが…!】
まず邦題へのイチャモンだが「なんか合わない!」
ごく初期にラブコメ映画かな?と思うようなシーンがあるが、全編通してそのノリでラストがポーランドばんざーい!とかいう明るく娯楽的な作品ならこのタイトルでも何とも思わないが、悲惨に次ぐ悲惨、死に次ぐ死…という感じの作品にこのタイトルだと、なんか、エーッ?!と思ってしまうのだった。
原題は『WARSAW44』(たぶん)なので、それでいいじゃないか…。
いや、ワルシャワで1944年にどんなことが起きたのか、日本ではあまり知られていないためにこういう感じの邦題にしたのかな?とは思うけど。

 

【疑問点】
前回も書いたが、他国の歴史を知らな過ぎて、他国の戦争映画を見ると意味がわからない部分がたくさん出てくる。
今回事前にポーランド近代史についてサラッと調べてから鑑賞したが、それでもいくつか疑問があったのでそれについて書こうと思う。

 

shado-farm.jimdo.com

こちらはストーリーの把握のために参考にさせて頂いたサイト。


疑問① カラがシュテファン(主人公)を好きになったきっかけは?
これがまっっっっったくわからなかった。
というか、上記リンク先の記事を読むまで、カラがシュテファンを好きだったということ自体わかっていなかった。
なのでシュテファンとカラのセックスシーンは「明日をも知れぬ命と思ったらなんか盛り上がっちゃったのかな」くらいに思って見ていたし、カラがアラ(ヒロイン)の抜け駆けを責めるシーンでは「カラさん何を怒ってるんだろう?」と思って見ていた。
そしてアラの抜け駆けにはそういう意味だと気づいていなかった。
報告しないで持ち場を離れたらまた怒られるもんな~、としか。
というかカラはごく初期にシュテファンのこと酷評してなかったか?
「彼はシャイじゃなくて野暮」みたいなこと言ってたのに。
ツンデレってこと?

恋愛描写について読み取れないのは私がアロマンティックに該当するからかもしれないと思う。
とにかく、どのへんの描写でカラはシュテファンのことを好きなんだな、と判断するものなのかが知りたい。
わかる人はぜひ教えてほしい……

アラとシュテファンが互いに想いを寄せているというのは読み取れた。

疑問② ポーランド人を貶めたりかばったりするドイツ兵
ポーランド側の捕虜になったナチスドイツの兵の台詞が不思議だった。
捕虜として看護されている時には「ポーランド人はバカだ」「ドイツ人の怖さを知らんのか」と散々罵っていたのに、病院からポーランド国内軍(たぶん)が撤退してドイツ軍が到着すると「手厚く看護してもらった」と言いポーランド人をかばっていた。
これは色々調べてみて、もしかしたら到着した部隊がカミンスキー旅団やディルレヴァンガーだったのかな、と思った。
カミンスキー旅団とディルレヴァンガーは素行が悪いことで有名だったそうで、ワルシャワでは戦闘よりももっぱら虐殺・略奪・婦女暴行を行っていたそうだ。
捕虜のドイツ兵がポーランド人をかばったのは、彼もあまりに残虐なのはちょっと……と思ってたということだったのかな。

疑問③ ソ連軍が来ることを望む人
アラが逃げ込んだ地下壕に、ソ連軍が来ればいいのに的なことを言っている人がいた。
ポーランドから見たらソ連ナチスドイツも敵だと思って見ていたのでよくわからなかったが、蜂起の時点ではワルシャワナチスドイツ占領下で、しかもソ連軍が蜂起を呼びかけたんだな。
ソ連軍の協力を期待しての蜂起だったから、ソ連軍が来ることを望んでいたのか。
結局、到着したソ連軍は地下壕に手榴弾を投げ入れたけど!
ソ連軍が裏切った(?)という情報は市民には伝わってなかったのかな。

疑問④ ポーランド人からユダヤ人への差別は描かれていたか
戦中のポーランドにも反ユダヤ主義はあったそうなので、それが描かれているか気になった。
もしかしてそうかな?と思うシーンはあるにはあるがあまり自信がない。
レジスタンスがナチスドイツの拠点を制圧した際にユダヤ人捕虜達を解放している。
そこで、前年のワルシャワ・ゲットー蜂起(ナチスドイツに対するユダヤ人の蜂起)の生き残りと思しきユダヤ人が「一緒に戦わせてくれ」と言う。
その時のレジスタンスの態度がもしかしたらそうなのかなとは思うが…よくわからん。

疑問⑤ 主人公は生き延びたのか?
描かれてはいないけど、アラはレイプされて殺されてしまったんだろうと思う。
よく見えなかったが、シュテファンが見た病院の死体の山の中にアラもいたのかも。
病院に残るアラの前に現れたドイツ兵は、もともとワルシャワに駐屯していた部隊の人ではなく、後から投入された部隊の人(カミンスキー旅団かディルレヴァンガー)なんじゃないか。
しかもアラに投げキッス(?)してる。
虐殺・略奪・婦女暴行を主に行っていた部隊の人が性的なサインを送ったということは、そういうことなんじゃないかなと。
作中に婦女暴行に関連するシーンは2つほどあったと思うが、それらを伏線として(アラもきっと…)と想像させる作りなのかな。
ラストに出てくるアラはシュテファンが思い描いた幻だと思う。

シュテファンの生死はよくわからないなと思うが、私は死んでしまったと解釈している。
シュテファンを見付けたドイツ兵はキッチリ撃っているように見えたし。
このシーン、シュテファンが「丸腰だ」と申告してきたドイツ兵を射殺したシーンと逆の構図になっているんだな。

シュテファンについては、


パターン1:撃たれてその場で死んだが「川へ行かねば」という意思が対岸へ辿り着いた自分の幻を見せている
パターン2:撃たれたがなんとかその場を脱し川へ、対岸へ渡り切ったところで死亡

 

こんな感じかと思ってる。
アラの幻はお迎え表現みたいなものなのかなと。

 

そんな感じで大変しんどい映画だった。
でもラストの燃えるワルシャワの映像はとても美しかった…